なんとも、不思議な本。
おそらく私はまだ読みこなせていない。
目次は以下の通り。
1時間目 わかる
「なぜ、世界中でなんでも売りまくってきたのに、日本の大企業でうまく営業できないのか?」
2時間目 考える
「なぜ、可愛い子なのに彼氏ができないのか?」
3時間目 伝える
「なぜ、TOEIC900点のイケメン学生は就活がうまくいかないのか?」
…なんとも、不思議な本である。
1時間目は、
卒業生が「うまく営業できない~!」とFacebookメッセージを送ってきた、
というエピソードから始まる。
先生(筆者)は、まるで占い師のように、彼女のある状況を言い当てる。
むろん、種明かしが続く。
ロジカルに考えるとはこういうことだよ、という本なのだから。
ああ確かに、と思ったのは、
「似ている」は、「同じ」と「違う」からできている。…という説明。(p.21)
ああ確かに…!
しかし、こんなにも易しい言葉で説明したロジカルシンキングの本が、他にあるんだろうか。
「似ている」は、「同じ」と「違う」からできている。
…素晴らしい。
小学生でもわかる。
しかし本文はなかなか難しい。
説明されていることはわかるが、専門用語がわからないので他で調べようがない。
それでも文章の向こうに専門知識が奥行きをもって広がっている印象がある。
ちょっともどかしい。
「時間的前後関係」と「因果関係」を取り違えない(p.24)
需要供給曲線(p.28)
など、少しだけ難しそうな言葉も出ては来るが、このくらいであり、説明も丁寧。
しかも…最初の学生の投げかけ、そのあとの電話での会話が本当に日常会話で、
そこから緩やかに先生(筆者)の知識体系にふわぁ~っと言葉が連なる。
本当に不思議な本。
2時間目は、合コンに行って気になる男の子がいても、
「つきあうことになったらどうしよう…」と考えてしまってうまくいかない女の子。
…なかなか、メンドウなかんじ。
デートまでこぎつけたけど、手も握らないで終わった…とか。
もうメールが来ません…やっぱり私に欠陥があるんでしょうか…とか。
…先生、乙女心にここまで寄り添えるなんて、強者すぎます。(笑)
しかもこれを…ビジネスに置き換えて説明していたりするからすごい。
「彼が自分のことを好きになったらどうしよう」は、
「競合が新商品を出してきたらどうしよう」と同じ。(p.46)
この箇所のタイトルは
事実と違うことを想定するのが「考える」ということ
…おおお。
確かに。
これはひとつの、起きてもいないことを心配する、という意味での「考える」だ。
「起こりうる可能性」を想定すること、つまり「仮説」を立てることを、
ロジカルシンキングでは「考える」と言います。…と。
言い切れる先生(筆者)のその、ロジカルシンキングの知識が知りたい。
3時間目は、
就活の面接で嘘をつき通そうとしてバレた男子学生の話。
…またまた、すごいな。
しかも、条件(福利厚生が充実しているなど)の良い会社に入りたいので、なかなか内定が取れない。
そんなわけで、先生(筆者)に質問メッセージが送られてくる。
「君、第一志望じゃないね」と言われてしまうんですが、どうしたら第一志望だと思ってもらえますか?
…すごいな。
これにちゃんと応える先生(筆者)がすごい。
…これはぜひ、本文を読んでください。p.103です。
最後の項目のタイトルが、素晴らしいメッセージなのでご紹介したい。
誠意がなければ、ちょっとうまくいったとしても、長続きはしない。(p.106)
…ホント、すごいな。
トンデモない学生が次々と登場するこの本。
そもそも、「はじめに」で紹介されている学生とのやりとりが、すごい。(p.2)
「自分で考えてごらん」
「うーん。思い出せません」
…意味がわからない。という読者へ。
つまり、こういうことだ。
学生たちにとって、考えることはおおむね「思い出すこと」であり、勉強は「パターンを覚えること」でした。そして、「コピペをすれば、考えることの代用になる」と思っています。これらは今時の若者に共通する「考える行為」のイメージであるようでした。(pp.3-4)
自分で考えられない若者たち。
この本を読んだら、考えられるようになるのだろうか。
この本を読んだだけでは難しいにしても、
この先生が教えて、どれくらい考えられるようになったのか、非常に気になる。
筆者の愛あふれる視点に敬意を表する。
『直感でわかるロジカルシンキング』
伊藤 達夫 (著) 、技術評論社 (2015/2/19)