『中学英語で通訳ができる』

タイトルに惹かれたものの、どうなんだろう? と疑心暗鬼だったが、
完全に良いほうへ裏切ってくれた本。

それもそのはず。
著者は日本通訳協会の会長、向鎌治郎さん。
そして戦後再開後初の「日米学生会議」代表も務めた、丸山祥夫さん。
(大変失礼いたしました…!)

こんなキャリアのお二人が、
「だれでも簡単に練習できる通訳の本はつくれないか」
「大学や専門学校の通訳クラスで使える教本が欲しい」
「効果的な新しい英語教育の方法はないか」
「英語のプロでなくても、日常生活や簡単な商談に活用できる本にしたい」(p.Ⅳ)
という目標を掲げて作った本、というのだから…良い本にならないはずがない。

 

PARTⅠ 通訳とは
Chapter1 通訳の基礎知識

まずは通訳の種類から。(pp.4-19)
易しい順に…アテンド通訳、ガイド通訳、耳打ち通訳、
パーティー通訳、スピーチ通訳、商談通訳、会議通訳。
…通訳に種類があることなど、知らなかった。
説明を読めば、確かにそれぞれ求められる能力が異なる。

次に、通訳の方法。(pp.20-23)
要約通訳、逐次通訳、同時通訳。

それから、英日通訳と日英通訳、それぞれの留意点。
…確かに、どちらからどちらへ訳すかで、注意するべきポイントが違う。
こうした「なるほど!」ポイントが随所にちりばめられている。

 

Chapter2 英語はまず「音」を聞き取ることから

リズム、母音、子音、アクセント、ストレス、イントネーション、トーン。
以上7つのポイントについて、さらっと確認。

 

Chapter3 いろいろな通訳トレーニング

具体的なトレーニング内容。3種類。

1.シャドーイング練習
2.キーワードを捕まえる練習
3.「イメージ化」練習

 

Chapter4 通訳メモの取り方

1.通訳メモの重要性
2.ノート・テーキングの基本
3.実際のノート・テーキング

まるで速記のようなメモの取り方。
実際の手書き文字が例として紹介されている。
…なるほど!
通訳者のひみつ道具のひとつを知った気分。

 

Chapter5 同時通訳の基本

1.英語を頭から訳していく
2.FIFOの原則
3.英日同時通訳の基礎練習
4.サイト・トランスレーション

同時通訳では、先程のノート・テーキングは使わない。
メモを取ることなく、どんどん訳していく。
しかし内容を落とさない工夫が紹介されている。

 

Chapter6 知っておこう

1.ミスを恐れることが最大のミス
2.大ベテランも間違える
3.日本人の弱点
   文法編、語彙編

ミスも程度問題で、
そのままにしておいても良いミスから、その場ですぐ修正が必要なミスまである。
…なるほど。

「日本人の弱点」は、数ページを費やして具体例を紹介している。(pp.68-81)

 

以上がPARTⅠ。

後半のPARTⅡは、実践通訳演習。
付属CDを聞きながら、実際に通訳トレーニングができるようになっている。

…これはすごい!
どこまでを一区切りとして訳したら良いか、トレーニングできる。

最初にレベル・チェックもあり、
ウォームアップ練習を経て、
センテンスの練習。
そしていよいよ、逐次通訳、同時通訳の演習。

 

リスニングCD付きの本は数多くあるが、
同時通訳というひとつの実践的な目標に向けて構成されていて、
しかも内容的には中学英語レベル、
というのは、なかなか見ないのではないだろうか。

くりかえし練習して、ぜひマスターしたくなる一冊。

 

中学英語で通訳ができる
向 鎌治郎 (著), 丸山 祥夫 (著), 日本通訳協会 (編集) 、ジャパンタイムズ (2000/11)

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